2016年 03月 11日
3年前に沖縄タイムスに連載していたエッセイに書いた文章。あのときのパートナーとは、1年余り前に別れてしまったけれど、あのときやその後に感じた思いは変わらない。あのときに戻って、彼の手を握ってあげられたらいいのにな… ーーーーー 最近、講演で同性愛について話をするときに、必ず見せる絵がある。熊の姿に描かれた二人の男性が手をつないでいるもの。それには、こう書き添えられている。 「あの日、一緒に歩いて帰りながら、不安なのに互いに遠慮して手をつないで歩けなかった僕らのために。誰もが誰かと一緒に歩くことがこれからもできるように、祈りを込めて。」 実はそれは、僕のパートナーが描いたもので、そこに登場しているのは、二〇一一年三月十一日の僕と彼だ。 言うまでもなく、それは東日本大震災が襲った日。僕らは、一緒の仕事で都心にいた。震源地付近や、津波の被害を受けたところに比べれば大したことはなかったとはいえ、震度5強を記録した東京も激しく揺れ、大混乱だった。僕らは、夜九時頃になりようやく家に向かって歩き始めた。 たくさんの人がぞろぞろと歩いている不思議な光景。静かな緊張感と大きな不安、非日常的な状況へのハイテンションが交じった奇妙な雰囲気の中、僕らは3時間以上歩いた。その夜は、かなり寒かった。そのとき、異性カップルなら、普段手をつながない人でも、きっと手をつないだだろう。寒さと不安を和らげるために。でも、僕らはそうしなかった。そうしようか?と口にもしなかった。 僕は、手をつなぐことのリスクをと考えていた。普段は笑われるくらいのことでも、社会的な緊張感が高まっているときには、何が起こるかわからない、と。 後になり、二人とも同じように手をつなぎたいと思っていたと知ったとき、お互いをいたわり合えなかったことに僕らは胸を痛めた。そして彼は、そのときの僕らのためにその絵を描いてくれた。 僕らは願っている。同性カップルが、手をつなぎたいと思ったとき、恐れや不安や気負いなく手をつなげる社会を。だから、僕らは、声をあげ、行動し続けていく。
by hideki_sunagawa
| 2016-03-11 16:55
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