2010年 04月 06日
先日、テレビを見ていたら、「結婚が女の幸せか」的な議論をしていて、愕然とした。女だろうと男だろうと、トランスジェンダーだろうと、何が幸せかなんて千差万別なはずなのに、相変わらず結婚を軸に議論がされるなんて…。 その反対として語られるのは、「一人で生きていく」こと。なぜ、「結婚しない」イコール「一人で生きていく」なのかが全く理解できない。結婚しなくても生涯のパートナーを持つ人もいるし、パートナーがいなくても、友人や仲間がたくさんいる人もいる(もちろん、そういう関係なく生きることも、それで本人が満足するならいいわけだが)。 その番組には、たくさんの「女子大学生」が参加していたのだが、一人が「自分の母親も専業主婦で家に帰ったらいつもいてくれたので、自分もそういう風になりたい」と語っていた。「専業主婦」を選ぶというなら、別に否定はしないが、その判断をするときにとても大事な視点が欠けていると思う。 それは、自分の母親がそうやって生きてきた時代と今の時代とでは異なっているし、その違いはだんだん大きくなっているということだ。会社などで活躍する女性が、少しずつとはいえ増えていることは間違いない。また、起業したり、専門的な技術などを活用したりして、社会的に脚光を浴びる人も増えて行くだろう。そんな華やかなあり方でなくとも、働き続ける女性はどんどん増加するはずだ。 そんな中、本当に「家事も価値がある仕事」という言葉で納得して、「専業主婦」を続けていくことができる人がどれだけいるだろうか?(僕自身は「家事も価値がある仕事」と思っている、だからこそ、男性ももっとすべきだと思う) 自己実現というイメージがさんざん刷り込まれているこの時代、そんな言葉で納得し続けられる人がそんなに多いとは僕には思えない(もちろん全くいないとは思わない)。だいたい、家事(そして育児)自体、働き続ける人もやっていたりするわけで、「専業主婦」との違いは、学校から帰って来た子どもを家で迎えてあげる、とか、家事の充実度を増すという点だけだ(しかも、子どもはあっという間に家で迎える必要のない年齢になる)。 また、結婚が社会的な役割みたいなもので、結婚とは一生添い遂げるものという価値観が強かった時代(実はそういう時代は長い歴史ではごく一部の時代なのだけれど)なら、「専業主婦」は安定した地位と言えたかもしれない。しかし、今はそうではない。 今の時代は、結婚とは感情の結びつきに重きがある(その辺のことは、ギデンス『親密性の変容』に詳しく書かれている)。結果、感情の結びつきが何らかの理由で弱まったり、途切れたりすると、社会的役割としての意味が強かった時代より、離婚へとつながりやすい。そんなときに、経済的に自立できない「専業主婦」はどうするのか? また、DV(ドメスティックバイオレンス)に悩みつつも、経済的に自立できないことを気にして離れられないという女性もいる。そんなリスクも考えつつ、「専業主婦」を選ぶなら、それはそれでいいだろう。だが、残念ながら、今の日本の社会では、一旦「家庭に入る」という選択をしたら、なかなか充実感を得られるような仕事に戻りにくいのだ(その社会的なあり方も大きな問題!)。 …そんな話を今年のジェンダー論の授業でもしていくつもりだけど、どれだけの人に届くかなぁ…。
by hideki_sunagawa
| 2010-04-06 00:10
| LGBT/gender
|
アバウト
カレンダー
以前の記事
2023年 07月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2017年 12月 2016年 12月 2016年 03月 2015年 12月 2015年 08月 more... 記事ランキング
カテゴリ
その他のジャンル
最新の記事
ブログパーツ
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||