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One Voice

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2015年 03月 19日

振り返りエッセイ(2)

僕がパートナーの前で声をあげて大泣きしたのは、あれが最初で最後だった気がする。

僕が沖縄に越してから半月ほど経った頃、彼が沖縄を訪れ、僕が一人暮らしをするアパートに1週間ほど滞在してくれた。一緒に料理をしたり、家からあまり遠く無い範囲を散策したり、沖縄の友人を家に招いてホームパーティーをしたりして、ともに時間を過ごした。

のんびりと過ごせたのは良かったけれど、僕が沖縄に帰ってからもペーパードライバーのままで、車を運転できるようになっていなかったため、どこにも連れて行ってあげられないことを心苦しく思ったことを今も、チクチクとした痛みをもって思い出す。

彼が帰る前夜か前々夜だったろうか。もう眠ろう、と布団を並べて寝始めたのだが、ほとんどずっと一緒の状態で1週間を過ごして別れるつらさや、全く先のことが決まっていないことへの大きな不安に押しつぶされそうになった気持ちが込み上げてきた。

そして、実は21年間住んだ東京の方がふるさとよりも身体感覚として馴染んでいたということに気づいてしまったことへの戸惑いなど、様々なよくわからない思いがこみ上げてきて、僕の目からポロポロと涙が流れ始めて、そのうち堪えきれずに声をあげて泣き始めたのだった。

その日から、もう4年になろうとしている。引っ越してきた頃の沖縄での人間関係と今の人間関係はだいぶ変わり、広がりもした。沖縄でもLGBTに関する活動を大きく展開し、ともに活動するすばらしい仲間もでき、沖縄でのLGBTに関する社会問題への関心を高めることずいぶんと寄与できたと思う。でも、あのときのつらさ、不安、戸惑いといった気持ちを完全に乗り越えられたかと問われると、正直自信がない。むしろ根深くなってしまったものもあるかもしれない。

いろいろ変わったようで、変わっていないようで、でもどんな風に過ごしても時間は流れていく。東京での21年間を、止まってしまった失われた時にするのではなく、沖縄に帰ってきてからの4年間を接ぎながら新しい花をつけ実をつけていこう。









by hideki_sunagawa | 2015-03-19 20:49 | Diary


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