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2015年 02月 11日

振り返りエッセイ(1)

「寂しそうにしてますぞ」という言葉に、胸を突かれた気がした。

お世話になっていた、東京・二子玉にある小さなお茶屋さんの店主の言葉。20年余り住んだ東京を離れて故郷である沖縄に帰ると決め、その時が近づく中で言われたものだ。

僕には、付き合いはじめて4年(当時の段階で)になっていたパートナーがいた。その彼とは、僕が沖縄に帰ることをめぐって、きちんと話し合うことはなく、そのまま遠距離の付き合いになることが暗黙の了解となっていた。彼は、そのお茶屋さんのロゴやメニュー等のデザインを手伝っており、その店主は僕と彼の共通の友人でもあることから、先の言葉をかけてくれたのだった

パートナーは、沖縄に帰りたいという思いを持つ僕に気を遣い、直接「寂しい」とか「帰って欲しくない」と口にすることはなかった。それをいいことに、僕は、彼の気持ちを見ないようにしていたと思う。そんな中、言われたのがその言葉だった。その言葉は今も心に残っていて、思い出す度に、胸が締め付けられる。

心のどこかで、沖縄で彼と一緒に暮らせたらと思っていたけれど、東京に生まれ育ち、まだまだやりたいことがある20代後半の彼に、強くそれを求めるのは無理な話だった。それとなく、沖縄での求人を紹介してみたけれど、彼がそれに関心を示すことはなかった。それは、当時もいたしかたないことと思えたし、ましてや、今から振り返って考えると、とても賢明なことだったと思う。

共に沖縄に越すという選択は難しく、しかし、引き止めることは僕の望みに反すると思い我慢した彼の気持ちはどんなに切なかっただろう。自分の気持ちに言葉を与えてはっきりさせたり、表現することが必ずしも上手いわけでもない彼は、イラストでそれを形にする。そんなイラストのあちこちに、寂しさが出ていた。けれど、前向きで、僕のやりたいことをいつも応援してくれていた彼らしく、それを抑えて、僕を見送った。

あの時、僕は東京での生活に疲れ果てていたし、ちょうど任期付きの仕事が終わりとなり、74歳になっていた老いた母親も心配だったことなどから、沖縄に帰ることした。もし、それを選択しなかったら、どうだったろうかと度々考える。彼との関係も、生活も。

とはいえ、選ばなかった未来を想像しても、あまり意味のないこと。とりあえず、選択してからの自分を少し振り返りながら、「振り返りエッセイ」として記録してみようかと思い立った。まぁ、最近はすっかり更新が少なくなったブログなので、いつ、どれくらいの頻度で書くかはわからないけれど。気が向いたときに。






by hideki_sunagawa | 2015-02-11 23:12 | Diary


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