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2013年 09月 26日

二つのLGBTに関する講演

もうだいぶ経ってしまったが、今月の上旬、二つのLGBTに関する講演会があった。

一つは、GRADiで9月4日にこじんまりと開催した、杉本智紀さん(スタンフォード大学博士課程:人類学専攻)の「近年の米国におけるLGBTアクティビズムの動向」。

もう一つは、9月10日、主催:在沖米国総領事館、共催:ピンクドット沖縄、後援:那覇市で開催した「HRC(ヒューマン・ライツ・キャンペーン)」の法務部長ブライアン・モールトンさんの「すべての市民を平等に~アメリカの社会変革活動とLGBTの権利向上~」だ。

たまたま約1週間のずれだ開催されたこの二つの講演会だったが、両方聴いたものとしては、不思議なほど良い組み合わせのものとなった。


▼「近年の米国におけるLGBTアクティビズムの動向」

杉本さんは、僕が東大でチラッと教えていた頃に授業を受けてくれていた教え子(「教え子」というほど教えてないのだけれど…)。カルフォルニア大学サンディエゴ校で人類学専攻で修士をとり、博士課程からスタンフォード大学に行くことにしたようだ。今回、沖縄に来るということだったので、講演をお願いしたのだった。

さて、彼の話をかいつまむと…まず、2000年代以降の米国のLGBTアクティビズムは、80年代以降長らく大きなテーマだったHIV/AIDSからシフトした(薬の開発が進んだので)、そして<良くも悪くも>運動がメインストリーム化したという。

そして、メインストリーム系の団体と、階級や人種の問題を合わせて考えようとする団体の間に対立があったり、同性婚を最大のテーマとすることや軍隊に対する評価について意見が分かれていたり、また、アカデミックな理論とアクティブズムが断絶しがちだったりするという状況があると。

そんな中、Jabir Puarさんというラドガース大学教授が書いたTerrorist Assemblages(2008)という本は大きなインパクトがあったとか。彼女は、LGBTが国家のシステムに組み込まれていく過程でどういうことが起こっているのか?を検証し、批判しているようだ。LGBT運動がイラク戦争を指示したり…。

そして、話の最後に、杉本さんは、同性婚をテーマとした運動が大きな成果をあげつつあるが、それが最終目標なのか?という問題についても語ってくれた。


▼「すべての市民を平等に~アメリカの社会変革活動とLGBTの権利向上~」

a0137527_22273556.jpgそして、先の話の「メインストリーム系」のトップがHRC。

なんと、会員数は200万人!(一人100円ずつ出しただけで2億円集まる!w)

全米最大のLGBT権利運動団体だ。

先に、このブログで書いた、米国の人気俳優Wentworth Millerさんも、会員であることをカミングアウトの手紙の署名のところに書き記している。

この講演会の動画を、在沖米国総領事館がアップしてくれているので、時間のあるときにご覧いただけましたら(ちなみにですが、この逐次通訳の人がすばらしく上手で、皆が、「この人からこの話を聞いているかのよう」と言っていました…なので、とても聞きやすいです)。

ブランアン・モールトン氏(HRC)講演会「全ての市民を平等に」

彼の話を聞いて思ったのは、わかってはいたけれど、やはり米国のこのような団体の戦略性の高さたるや!キャンペーンの言葉を吟味し、イメージを考え、あらゆるセクターと協働していくその徹底ぶり。戦略自体は様々検討しても、ミッションは明確でぶれない。それこそ、先の杉本さんの話にあったような、他の問題(特に他のマイノリティ性とからむ問題)との交差する点からLGBTの問題を見ようとする人たちからは大きな批判があるだろう。しかし、おそらくHRCは、その批判は始めから折り込み済みで、割り切って、到達目標に向かっているのだ。


▼二つの講演の後で

杉本さんの講演の後の座談会の中でも、モールトンさんの講演の後の交流会の後でも(交流会はGRADiで関係者でおこないました)、ピンクドットに関わった者たちで共通して確認したことは(それぞれ、どこに向かいたい気持ちが大きいかはさておき)、次のようなことだったような気がする。

メインストリーム化しなければ社会的な課題は解決しないし、かといってメインストリーム/エスタブリッシュメント(確立された体制的なもの)のあり方にそのまま全て取り込んでは、あるいは取り込まれては意味の無い部分もある。そのさじ加減がとても難しい。入り込んでいくなら、その危うさを自覚しながら。

これは、もちろんLGBTの問題だけではない。あらゆる社会運動が経験してきたこと。いずれにせよ、僕は、社会自体が複雑な多様な力と形でマイノリティを抑圧するのだから、マイノリティ側にも多様な運動が生まれるのは当然だと思っている。


▼最後に手前味噌的な一言…

この二つの講演会はとても素晴らしいものだったし、それをめぐってのピンクドット沖縄メンバーとの会話はとても充実したものだった。そして、モールトンさんの講演会は、主催の在沖米国総領事館の方はもちろん、県庁の方や那覇観光協会の方も尽力してくださり、また、沖縄観光コンベンションビューローさんも会議室を貸してくださるなど、いろいろな立場の方々が関わって実現されたものだった。

今年開催したピンクドット沖縄も含め、沖縄という地域で、面白い素晴らしい仲間たちととてもレベルの高い充実した活動ができていると思う。地域を動かしながら、世界ともつながっていく、そういう活動を創り出していけたらいいなぁ、と振り返りつつ思う。


★杉本さんが紹介してくださった本




★社会運動論についての本


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by hideki_sunagawa | 2013-09-26 21:56 | LGBT/gender


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