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2013年 01月 10日

同性愛と「好み」

ある大学で心理学を教えている教員が、神奈川県が同性愛者向けのサポート活動を民間団体と一緒にやっていることに対して、「次はロリコンか熟女マニアをサポートしなくちゃな」とツイートし、批判を受けて謝罪するということが起きた。

この議論の中で、謝罪した本人も批判した一部の人も、「指向と嗜好を混同」という表現だけで語ってしまったために、逆に「指向と嗜好は分けられるのか?」という疑問を経由して、やはり同性愛を「好み」全般とをごっちゃにした話に落ちつくということが起きているようだ。

この論の展開は、正直言って、あまりにもくだらない。

もともと、同性愛と「ロリコン」と「熟女マニア」が同じカテゴリーとして並列的に成立しないことがどうして理解できないのだろうか。同性愛は異性愛と並ぶカテゴリーだ。「ロリコン」「熟女マニア」(男性が対象となる場合は「中年男性orおやじマニア」?)は、ある意味では、その下にあるサブカテゴリーになる。

逆に言うと、同性愛/異性愛は、もっと大きなカテゴリーの話だ。そして、異性愛が制度化されていて、中心化され、圧倒的な規範として成立している構造を問題化するようになったのが、同性愛者のアクティビズムである(そのような問題化がおこなわれるようになったのは、もちろん社会の変化によるものであり「普遍的」なものではない、しかし、だからと言ってその動きを否定する理由にはならない)。

もし「熟女マニア」(中年男性マニア?)を認めよ、という運動が、<同性愛者のアクティビズムと同じレベルで>起こるとするなら、若者との恋愛や結婚しか世の中にはないかのように制度化され、中心となり、規範となっているような社会が想定されなければならない。

しかし、「熟女」「中年男性」でも異性であれば(そしてお互い独身であるか等の条件を満たせば)結婚はできる。しかし、どのような条件でも同性同士へ結婚できない。

ちなみに、「ロリコン」は性行為をめぐる同意という、さらに別の問題が生じるため、ここでは詳細には議論しない。しかし、異性の組み合わせでも同性の組み合わせでもあるのだから、やはりサブカテゴリーだ。


そして、現在私たちが生活している社会の中で、まず性別が極めて重要な属性となっている(その現実の善し悪しは別として)ということも重要だ。生まれるとすぐに性別が分類され登録される。その後、ずっと性別で区分され続ける。よって、どの性別を好きになるかが最も基本的な重要な問題になる。

それは幼いときから起こりがちだ。幼稚園生に「好きな子いるの?」と聞いたとき、同性の名前を挙げたとしたら、どういう反応が起こるだろうか。きっと、そのような発言に対し、「それっておかしい」と言う友達もいるだろう(実際にそういうことが起きたという話をよく聞く)。同性愛を肯定できない親は「この子大丈夫かしら…」と思うかもしれない。少なくとも、ドキッとする人は多いはずだ。

では、その子が、とても「熟女」「中年男性」と言えるような年齢の人の名前を挙げたとして、同性の子の名前があげられたときと同じくらいに、まわりの人はドキっとしたり、不安になったりするだろうか。ちょと変ね、と思うくらいだろう。そのことからわかるのは、「好き」という感情において、性別の組み合わせが第一の規範基準になっているということだ。


「同性愛と年齢軸の好みを区別するのは、同性愛者の運動による差異化」という主張で、いろんな「好み」をごっちゃにする結論に至る人の思考枠組みは、結局は、[まともな好み]対[変な好み(=同性愛・「ロリコン」・「熟女好き」etc...)]というものだ。

しかし、「まともな好み」というものは定義できず、それに対する[変な好み]も限定できない(正確に言うと、「変な好み」を名指しすることでしか「まともな好み」は成立しないが、その名指し対象は網羅されることはありえなく、また個々人によって大きく異なるため、このような対立軸は成立しない)。よって、この図式はおかしいのだが、そのことに気づかずに、その図式に基づいた議論(?)に悦に入ってる人が奇妙に見えてならない。

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ちなみに、私は、<もともとは>「指向」というのは、どういう対象に恋愛や性行為の対象が向くかということと考えているが、その中で性別のみを「指向」と表現するのは、ここで書いたように、性別をめぐる問題が社会的に圧倒的な力を持っており、その状況が折り込まれているから、と解釈して肯定している。しかし、「指向だから」という説明だけで同性愛者への理解を求めることは素朴すぎる主張とも感じている。



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by hideki_sunagawa | 2013-01-10 01:21 | LGBT/gender


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