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2012年 03月 17日

講演「尊厳死と同性婚」報告

▼講演会に参加しました

昨日、開催されたブレイク・オオシロ氏の講演「尊厳死と同性婚」に行って来た。行く前から「十分に広報されていないようだけど、大丈夫?」と思っていたけれど、案の定、大きなホール(300名くらい入るかな?)ながら、参加者はおそらく40名ほど(しかしその中に、「このブログで知って来ました!」と声をかけてくださった方もいました!うれしかった〜!!)

どちらのテーマも重要だし、ハワイの議員の中でもかなり「実力者」(与党の代表を務めていた)で、シビルユニオンを実現させた人物の話が聞ける貴重な機会だっただけに、参加者が少なかったのは残念。


▼尊厳死をめぐって

最初は尊厳死について。米国では3州が認めている。要件はそれぞれの州で若干違っているが、オレゴン州では、余命六ヶ月であること、証人が二人必要なこと(一人は第三者)、もちろん当人の意志がはっきりしていること(後に取り消すこともできる)など。

彼自身が、この問題に関心を持つようになったのは、幼なじみが15歳でガンで亡くなったときのことを忘れられないからだという。激しい痛みに苦しみ、末期は痛み止めのモルヒネで意識がほとんどなく、「それまでの彼ではなかった」様子だったという。

「余命六ヶ月」という条件などから、一見、先日紹介したALSの人の問題と違うように見えるが、もしも、生きることを維持する装置などを拒否することが可能という前提があるなら、「余命六ヶ月」という判断がくだされる時期があるわけで、結局、もし十分なサポート制度があれば選ばないかもしれない死を選ぶという選択へと動かされるという状態には変わらないのではないか…と思ったり。


▼自分だったら…

ましてや、米国では、保険制度が日本とかなり違い、貧しい人は医療保険に入っていないため、十分な医療が受けられないという背景もある。保健制度が不十分な中(まぁ、それが不十分と思わない人も多いのかもしれないが)、尊厳死の制度化は疑問が残る。

確かに、自分が末期状態で苦しむこと、意識がなくなるかもしれないこと、を考えると、尊厳死には賛成したい。しかし、それが認められることによって、生きるための制度(貧富の差に関係なく生きたいと思う人を支えられる制度)を整備するための努力がなくなってしまうのではないか、というところがどうしても単純に「賛成」と言えないところだ。

うむー。難しい。


▼シビルユニオン

後半は、今年の1月1日に施行された、ハワイ州のシビルユニオンについて。シビルユニオンは、結婚とは定義上は一線を画しているけれど、法的には結婚とほとんど同じもので、同性間のパートナーシップを保証する形として、多くの国や地域で制定されている。

実は、ハワイでシビルユニオンが具体的に検討され始めたのは、米国でも最も早い時期(1991年)だけれど、実際に通るまでにだいぶ時間がかかった。これまで何度も議会に出されながらも通らず。通ったかと思ったら、知事が拒否権を発動したり…。

昨年も危うかったが、一つの変化をもたらしたのは、彼がカミングアウトしたことによるようだ。

彼が言うには、同僚議員たちにパートナーを紹介していたが、彼がゲイであるとは意識されていなかったという。彼が自身に15年共に人生を歩んで来た同性のパートナーがいること、なぜ、この法案を通したいと思っているかということを伝えたことで、反対する声が減ったという。

この法案を巡っての彼の葛藤は、大きかったようだ。彼は、当時、与党のリーダーで、そのリーダーとしての立場を求められていた。それは、同僚議員の意向を汲むこと、同僚議員を守ること、だったという。それと、自身が通したいと思っていた法案の間で苦しんだようだ。

その苦悩の末のカミングアウトだったようだ。


▼その後のハワイ

興味深いのは、シビルユニオンが通った後に、同性婚をめぐる世論が大きくかわったということ。シビルユニオンが通る前、2年前の調査では、同性婚を認めるべきと考えている人は30%だったが、それが、通った後では49%になり、反対の30%を大きく上回るようになったという。

やはり、議論を経て、また同性カップルが健在化する中で、同性カップルに対するイメージが変わったのではないだろう。


▼余談…

最後に、僕は、彼が議員になったときからこの法案を通したいと思っていたのか、それとも、議員を務めるうちにそう思うようになったのか、という質問をした。これは、彼のシビルユニオンをめぐる意識がどう変化したのかを聞きたかっただけなのだが、「この法案を通したいために議員になったのか」と聞かれたと勘違いした風だった(通訳が入ったせいもあるかもしれない)。

なので、回答は(当たり前だけど)、議員としてやってきたこと、やりたいことはたくさんあって、シビルユニオンはその一つというものだったが、ちょっと気に障る質問となってしまったようで、がっかり…。ま、いいんだけど…。


とにもかくにも、当然ながら、同性間パートナーシップをめぐって制度をつくりあげていくことには、やはり大きな労力と忍耐力がいるのだなぁ…と痛感。具体的な形として何かを実現するのは大変なことだ…。

by hideki_sunagawa | 2012-03-17 19:05 | LGBT/gender


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