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2012年 03月 09日

つらつらと思い出す

今月に入ったころから、テレビで、昨年の3月11日を振り返る特集が増えている。僕も、「あれから一年か…」と、当時のことを思い出すことが多くなった。

しかし、その頃もそうであったように、今もなお、とても複雑にからんだ気持ちや思考に整理をつけることはできない。


東京での揺れやそれに伴う経験は、凄まじい被害を受けた地域とは比べられない。それは、その地域に比べればあまりにも被害が軽く、ゆえに比べるの自体どうなのだろうという思いをもたらすからだ。

その思いが、東京でのあの時の経験を語りにくくしている。ものすごい数の人たちが、大きな不安を抱えながらも、妙に落ち着いた振る舞いで、何時間も歩いて家に帰ったり、街中で寝て過ごした。

僕も中心部から住宅地へ向かう流れの中にいた。揺れた時に開催されていた報告会が、予定通り夕方まで続き、その後、夜まで会議があったため(なんということ!)、家に向かい始めたのは夜だった。まだ寒く、妙な緊張感と不安ながら、一緒に報告会に出ていたパートナーと友人と延々と歩いた。

あの時は、初めての経験ながら、「こういう時はこんなものだろう」と言い聞かせていたけれど、今から振り返ると、胸が少し苦しくなるのはどうしてだろう?


数日間、東京では基軸とも言える電車も十分に動かず、最初の頃はそれなりにあった食べ物も日が経つれて不足気味になった。電気の節約もあいまって、東京全体が暗い雰囲気に包まれていた。地震が裂け目を入れたのは、大地だけでなく、空間であり、人々の気持ちであり…そんな気がした。

原発事故によって飛散した放射性物質に関して、様々な情報が流れ、心配する人とそうではない人との間で微妙な対立感がうまれた(それは今も続いている)。原発に近い人ならまだしも、東京の人が心配するなんて、という言葉を付随させる人も少なからずいた(いる)。

東京で一番放射性物質が降ったと<後から>報告された、その日、その時間、僕はたまたま仕事で外を歩いていた。それがどの程度影響するものかどうかわらかないけど、正直、心のどこかに「あーあ、なんでまたあの時に…」という気持ちが残っている。


原発に関しては、もともと東京で使う電力のためにつくられたものなのであり、東京のエゴの結果として語る言葉も(今もそうだが)多く聞かれた。その批判は、全くその通りだ。しかし、その構造を生んだ(生んでいる)のは、東京に住んでいる人たちだけの心性だけではない、という思いも僕の中にはあった。

都市化、効率のよい経済体制、国全体が経済的に「成長」することを望む心性、そういうものの延長線上に東京があるのは確かだからだ。そして、それを強く推進人と、それを批判する人は、東京(や大都市)に住む人と、地方に住む人に分かれるわけでもない。


東京あたりで地震を経験した人は、その揺れによって、その震災の片鱗に触れたという感覚がもたらされ、それにより、震災の映像の延長線上に(その遠い端に、とはいえ)自分たちがいたこと、いるこを痛感させられた。

延長線上にいたというその感覚が土台となって、沖縄に住んでいる友人たちとの震災を巡る感覚の大きな違いとなっていることを僕は強く感じていた。「映像に映し出していたような被害に合わなかった」という意味では同じはずなのに。

僕は、言語化しづらいその震災感の違い、共有できなさに、ずっと戸惑いを感じていた。そして、それは逆の側の共有できなさを照射することになる。やはり被害が絶大だった地域と、大きな揺れを経験してもそうではなかった地域の人とでは(と言っても、被害の程度は常にグラデーションなのだが)、どんなに想像をしても近づけない、共有できないものがあるということを突きつけられるからだ。

その両側とも共有できないという分断感が、常にひりひりとした痛みとなって抱え込まれている。だからこそ、国家の枠で一体感を強調する語り、表象には、一層苦々しい思いが残る。


また、この震災の経験は、「次は東京か」という思いを強め(だから、そのような報道も増えているのだろう)、一層大きくなった不安を背負わされることになった。そんな中、僕は東京を離れることになった(前々から決めていたことなのだけれど)。

だからこそ、東京を離れることへ妙な罪悪感みたいなものがあった。今も、複雑な心境だ。もはや、東京も僕にとっては故郷なのだから。

また、その後の、被災地の状況も、原発をめぐる事柄も、考えれば考えるほど暗い気持ちになってしまう。

一年経ったからといって、問題が解決したわけでもなければ、僕自身の気持ちも整理がついたわけでもない。いや、整理はつかないだろう。今は、整理がつかないまま、吐露することに意味があるような気がしている。
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by hideki_sunagawa | 2012-03-09 05:13 | Diary


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