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2011年 11月 29日

HIVの活動を始めた頃の話の話

昨日から始まったNHK教育テレビ「ハートをつなごう HIV第4弾」(午後8時〜8時半)、今回のテーマは「HIV/AIDS 30年の歴史」。水曜日まで三日連続の放送らしい。

イベント後のローな気分のせいか、何もやる気が起きず、この番組のことをすっかり忘れていたが、ふとつけたらやっていて、最後の十数分だけ観ることができた。

今日は、血友病の人の血液製剤によるHIV感染をめぐる話が中心だったようだ。


▼1990年に活動に参加した頃

僕がHIVの活動に参加し始めたのは、1990年。HIVと人権・情報センター(JHC)の東京支部の勉強会に参加し、あっという間に電話相談やらロビー活動やらを手伝うようになっていた。

当時、JHC東京で活動している人の数は、4−5人ほどしかいなかった。そのせいもあり、血友病の人たちもゲイも完全に混じって一緒に活動をしていた。おかげで、僕にとって血友病の人たちは身近な存在だったし、HIVの問題に共に取り組む仲間だった。彼らからいろんな話を聞き学んだ。

医師と血友病の人の関係、その中での告知の有無の問題、感染している子が思春期に差しかかるときに、どう伝えるかという問題、等々。今のように、薬でHIVを抑え込めるような時代でなかったから、問題は極めて深刻だった。

すべての政党をまわるロビー活動にも、補償を求める行政交渉にも何度も同行した。AIDSの発症に苦しむ我が子を病院が受け入れてくれない、と泣きながら語る母親の話には、胸がつぶれそうだった。しかし、厚生省(当時)の官僚は、ただ黙って聞くばかりで、とても何かの進展が期待できるようなやりとりではなかった。


▼ある血友病の青年

僕がJHC東京に入った頃に、中心メンバーの一人に血友病の青年がいた。彼もHIV感染していて、深く苦しんでいた。しかし、20代前半だった当時の僕は、その苦しみの意味も、彼が抱えていた精神的問題も全く理解していなかった。

僕は、すぐに会の中で発言力のある立場になっていったのだが、問題行動があった彼に対して、冷たい態度をとってしまい、とても傷つけてしまった。その後、僕は会を離れ、彼とやりとりすることは無くなり、そうこうしているうちに訃報を聞くことになった。

今、当時のことを思い出すと、自分の幼さがただ恥ずかしい。


▼婚約破棄の話

彼は、右手の薬指に指輪をしていて、それを意識しているような仕草が印象的だったのだが、その指輪が、彼がHIVに感染していることを告げた結果去ってしまった恋人との婚約指輪だったことを、会に入ってすぐの頃、会話をする中で知った。

その婚約者と別れた話を聞いたときに、心のどこかで、ほんの少しながら「そりゃそうかもなぁ…」と思っていたことは否めない。当然ながら、一緒に鍋をつつき、飲み物を回し飲みすることにもためらいを感じたことは一度もなかったけれど(当時は、それをためらう人がたくさんいた時代なのだ!)、当時はまだ、HIV陽性者のセックスはタブーだと思っていたのだ。

今や、薬の開発が進み、25歳くらいで感染した人のその後の平均余命は52.7年という推計が出るようになり、また、多くのHIV陽性者やそのパートナーの経験から、セーファーセックスを十分に気をつければ移ることがないということがはっきりしている。

僕自身も、彼と知り合って2年ほどしたときには、HIV陽性者のセックスに対する見方もだいぶ変わっていた。しかし、今もなお、当時の僕のように考えている人はまだ多いのかもしれない。


▼不思議なエピソード

ある日、彼が事務所の中で必死に何かを探していた。指輪が無くなったという。いつも肌身離さずつけていたのに。ソファーの間や下を一緒にだいぶ探したが、結局見つからなかった。そして後日、その日の夜に、元婚約者から電話がかかってきたこと、結婚することになったと告げられたことを、彼から聞いた。

彼は、「そういうこともあるんだねー、不思議だねー」と、思ったよりサバサバとした表情で語った。今となっては彼のそのときの思いは聞けないけれど。

1990年代前半に知り合ったHIV陽性者の多くは、この世を去ってしまった。彼らのことを思い出す度に、胸がしめつけられる。そして、今ならもっと寄り添いつつ話が聞けたかもしれないと、当時の自分の未熟さが悔しく、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

けれど、彼らの姿は、僕に何かを確実に残してくれた。そして、実はそれが、今もHIV/AIDSの問題に関わり続けている動機の一つになっているのかもしれないとも思う。
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by hideki_sunagawa | 2011-11-29 06:14 | HIV/AIDS


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