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2011年 10月 19日

関心を持たれるということ

一昨日、ふとNHK総合をつけたら、深夜に放送されている「ドキュメンタリー20min.」の再放送をやっていた。この番組、新人ディレクターがカメラを携えてドキュメンタリーを撮るという企画。取材している側が透明な存在としてではなく、撮影の中で垣間見えるところがいい。

この回のタイトルは「ここから、もう一度始めよう~シェアハウスのひと夏~」。サイトのあらすじは…

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人生の再出発を目指し、若者たちが集う札幌市郊外のシェアハウス。ある日、20歳の「りょう」が入居してきた。りょうは初めて心を許せる仲間に出会い、打ち解けていく。しかし、次第に甘えるようになり、仕事も真面目にせずに住人に借金を重ねてしまう。シェアハウスには、りょうを追い出すべきだという声も出てくる。果たして、りょうは再出発を図れるのか? りょうと同世代のディレクターが自らカメラを回し、ひと夏に密着。
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「りょう」が、寮長的な存在の人に話しかけられる中で馴染んでいき、「よかった」と思っていたら、問題を抱えるようになり、「どうなるんだろう?」とヒヤヒヤ。

ある夜、彼は、そのダラケた生活を仲間にこっぴどく叱られる。シェアハウスを出て外に出た「りょう」をカメラは追う。「叱られちゃったね」と声をかけるディレクター。

僕は、「りょう」がスネたことを言うのではないかと思ったが、彼の口から出た言葉は、「自分が悪いのだから叱られて当然」と。「これまで親でも学校でも叱られたことなかった。むしろ叱られたい」。

後日、彼を気遣って来た若い寮長が(そこでの呼び名は寮長ではなかったが…)、その場所を経営する会社の社員から怒られたとかで落ち込む。「りょう」が「どうした?」と声をかけるが、彼は、仕事もできないほど参っている。その姿を見た「りょう」は、寮長が普段やっている共有スペースの掃除などを自主的に始める…

ディレクターの「どうしたの?急に掃除始めて」という質問に、彼は、「何もしないと暇だし」と笑う。そして、「自分をかばってくれるみたいだし…」とポツリ。その姿を見て、僕は目頭が熱くなった。彼は彼なりに考えた恩返しをしてるのだ。

その後、バイトの面接に挑む「りょう」。しかし、手応えがあったと思った面接に落ち凹む。そんな彼に夜通しつき合う仲間たち。

それから随分経ったある日、寮長はディレクターをラーメン屋に連れて行く。そこには、正社員として採用され、凛々しい顔でしっかりと働く「りょう」がいた。そして、「すごいなぁ…」と言いながら、そのラーメンをうれしそうに食べる寮長。

〆は、ディレクターのナレーション。「人は支えてくれる人がいる限り、何度でもやり直せる。私は、私を支えてくれている人たちのことを思い出した…」。


たった20分のドキュメンタリーながら、胸が熱くなった。そして、ほっとした。ああ、まだこういう関係が築ける場所が大都市にもあるんだな、と。

「りょう」がしっかり立ち直れたのは、まわりの人が関心を持ち、時に「おせっかい」なまでに関わったからだ。また、ディレクターが彼を追ったことも、下支えになったかもしれない。

自分を見ていてくれる人がいるということ、関わってくれる人がいるということは、人が自分の存在を確認するため大切なことだ。もちろん、時にその関わりは「面倒さ」や「息苦しさ」を感じさせることがあるだろうけれど。


僕は、これまで、いつも、ある程度の関係性ができた相手に対して、「君の人生は君のものなのだから、僕は介入しないよ。自分の人生なんだから」という距離感を保とうとする態度と、「最終的に決めるのは確かに君だけど、僕は、僕の考えをぶつける!君と僕は関係ができた以上、お互いの人生に影響を与え合うのだから!」と強く踏み込む態度の間で揺れてきた。

やはり後者の態度でぶつかって行ったときの方が、強い絆ができ、その関係の中で自分が成長でき、そして時に支え合うことができた。もちろん、前者のような距離のある関係性の中で楽になったこともたくさんあったけれど…。

改めて、人と関係を築くこととは…?と考えさせられた20分だった。結局、生きている間は、その問いをめぐって考え続けるのかもしない。


「20min.」の公式サイト
この取材をおこなったディレクターの「裏話」(というか、感想)ブログ

by hideki_sunagawa | 2011-10-19 06:17 | Diary


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