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2011年 07月 01日

亡くなられた野宿者に思いをはせつつ…

3年前に多摩川周辺で野宿生活をされている方々が連続して鉄パイプで襲撃された事件があった。被害者は十数人。府中と世田谷で襲われ た 2人 が殺されている。それにより亡くなった被害者を追悼する会が先日おこなわれたようだ。その案内文には、いろいろ考えさせられる背景が書かれている。

野宿者を見る社会の目が、こういう事件を許し起こしているのだ、と改めて感じさせる。野宿者が襲撃を受けたり、殺害されたりすることが度々起こっている。これは、まさに憎悪犯罪(ヘイトクライム)。

マスコミも、野宿者襲撃を大きく扱うことはない。もし、例えば、サラリーマンを憎む人が、サラリーマンであるというだけで暴力や殺害の対象とする事件が起きたら、世の中は、いったいどんなに大騒ぎするだろうか。あるいは、子どもを憎む人がそういう事件を起こしたら?

よく無差別な暴力事件が起きると、「何の罪もないのに…」と言われる。まさに、暴力被害を受けた野宿者も「何の罪もない」。むしろ、その生活に追いやられているという状況で、既に社会/制度の被害者なのである。
 

== 以下、6月26日に東京で皆済された追悼会の案内文 ==

野宿者への差別と排除を許さない
殺害から3年 - 福岡正二さんを悼む


私たちは、福岡正二さんを忘れない
■2008年、多摩川沿いで、野宿の仲間が鉄パイプで連続して襲撃された

2008年6月27日未明、福岡正二さんが虐殺された。府中市にある高速道路下 の ひっそりと静まりかえった公園で、丸太のベンチに座って一人で 眠っていた福 岡さん。突然、鉄パイプで頭を何度も 殴られ、殺された(享年74歳)。

半年後の2009年1月2日未明、世田谷で、近藤繁さんが虐殺された。フェンス に 囲まれた高速道路下で体を横たえて眠っている時、鉄パイプで殴られ、殺 され た後も脳みそが飛び出るまで殴られ続け た(享年71歳)。

2008年3月から国立・府中など三多摩地域の多摩川周辺で、野宿の仲間が鉄 パ イプで連続して襲撃されている。そして、近藤さんが殺されたのを 最後 に、終息した。


■「人間のくず」を排除する、資本と行政

10件近い一連の事件のうち、近藤さん殺害と二人傷害の3件は、高本孝之さん が 逮捕・起訴された。高本公判の最終弁論(4/25)で、検察は、襲 撃によっ て近 藤さんの人生が突然終った、二人は脳など に後遺症が残った、と主張。

弁護側 は、高本さんが障碍(しょうがい)ゆえに生き難さを抱え、障碍ゆえに自分 の行為が もたらす 結果を想像しきれなかった、殺意はなかった、と主張した。 裁判 は、社会の秩序 を保つためにあり、近藤さんの「生」を明らかにはし ない。 また、障碍がある 野宿の仲間もいるのに障碍がある高本さんとは殺し殺され る関係になってしまっ たことを、あぶり出すこともない。

公判で明らかになったのは、高本さんが父親から、「ホームレスは人間のく ず。お前もホームレスになればいい」と言われていたことだ。人間を「く ず」 と「くずでない者」に分け、「くずは必要ない」 という考え方は社会に 広く深く 浸透している。例えば、1カ月ごとに契約をくりかえす派遣労働 だ。会社存続の ために労働者を気軽に辞めさせる論理が、まかり通っている。

むき出しの排除は、金儲けを必然とする資本だけではなく、行政も資本と一 体 になって流れを加速させており、仲間が生きる環境をますます苛酷にし て い る。墨田区はゴミに出されたアルミ缶を集め て換金していた野宿者の仕事を「資 源ごみ持ち去り禁止」条例によって禁じ、渋谷区は国際的なスポー ツ メー カー・ナイキがプロデュースする若者向け有料公園にするために宮 下公 園から野 宿者を追い出した。

野宿者が最後にたどりついた仕事と寝場所を行 政が率先し て奪い、生存するためのわずかな糧と休息さえはぎとっていく。 だからといって 野宿者が生活保護を申請しても、申請を拒否されるか、貧 困 ビジネスである 「寮」に入って規則と支配に従わされるか、どちらかの選択 肢しか示されないだ ろう。システム化した排除が、生存と希望を奪ってい く。それでも資本と行政 は、「殺意はない」と言うだろう。


■福岡さんへの想いを共に、つながろう

存在を許さない力が強まっている今こそ、私たちは、「生きている」と訴え よ う。目に見える殺しも、目に見えない巧妙な殺しも、許さない。福岡さ ん の死 を許さない想いを起点に、障碍がある仲間を含む、顔が見えない仲間と もつな がっていこう。

福岡正二さんを悼む会
 府中地域で共に生きる仲間の会/たまごの会/夜まわり三鷹/ 三 多摩自由労組/のじれん(渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合)/ 東 村山1/13万の会



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この問題と関連のあるおすすめの本。

▼生田武志『<野宿者襲撃>論』(2005年、人文書院)




▼生田武志『ルポ最底辺ー不安定就労と野宿』(2007年、筑摩書房)




▼北村年子『「ホームレス」襲撃事件と子どもたち』(2009年、太郎次郎社エディタス)



by Hideki_Sunagawa | 2011-07-01 10:25


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