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2011年 05月 11日

ウガンダの反同性愛法に関して

ウガンダ共和国で現在通りそうになっている、反同性愛法へ反対する署名の呼びかけが活発になっていることから、同法律の本文部分をざっと日本語に訳してみました(一部略しています)。誤字脱字、誤訳の部分もあるかと思います。

また、原文はこのページにあったものを使いましたが、その後変更になる可能性も高いです(国際社会の反発から、「死刑」はなくなりそうとのこと→英語記事)。

なお、ウガンダでこのような激しい反同性愛の法律が出てくる土台として、イギリスが支配している時代に同性愛を違法とする法律がつくられたこと(なので、この法律が通らなくても同性愛は違法となっています)、しかし(もともとイギリス由来にもかかわらず)、近年では、反同性愛が「アフリカの伝統」と意味付けられ、西洋的価値観の押しつけへのアンチの象徴として使われること、(さらに、ある意味それとも矛盾しつつ)、米国のキリスト教右派が反同性愛を焚き付けていること、が指摘されています。

そして、政府が、国民の政治不信/不満をそらすために、そのような背景で根付いているホモフォビア(同性愛嫌悪)を利用しようとしているということも、アフリカの事情に詳しいNGOの方から聞きました。

この法律案は2009年に最初に提出されましたが、ヨーロッパや米国の政府が圧力をかけたことにより止まっていました。しかし、ここに来て、改めて別の理由により国民の不満が高まっていることから、この法律を利用しようとしていると言われています。

なお、homosexualityを「同性<愛>」と訳すのが本当に適切なのか、という議論もありますが、ここでは定着している訳をつかったほうがいいだろうと考え、「同性愛」としました。


☆☆☆アフリカを中心としたNGO活動に従事している知人は、「この法律が通らなかったとしても、とても厳しい状況にあることは変わらない。息の長い支援が必要」と語っています。


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反同性愛法(THE ANTI HOMOSEXULITY ACT, 2009)

日本語訳:砂川秀樹

同性の人物間のあらゆる形の性的関係を禁止する法律:また、そのような関係を推進したり、認めたり、関連あることを提供することを禁止する。

1.説明
(翻訳者により略…語句の説明)


2.同性愛罪(the offence of homosexuality)

(1)以下の行為をおこなった場合、その人物は、同性愛罪を犯したことになる

(a) 彼が、同性の他者の肛門か口に、自身のペニスや他の性的器具を挿入する
(b) 彼あるいは彼女が、同性の性器に物や性的器具を挿入したり、それで性的刺激を与えたりする
(c) 彼あるいは彼女が、同性愛行為(the act of homosexuality)を行うことを意図して、他の人に触れる

(2) これらの違法行為を犯したものは、終身刑の判決の対象となる


3.加重同性愛罪(aggravated homosexuality)

(1) 以下の状況においては、その人物は、加重同性愛罪を犯したことになる

(a) その違法行為がおこなわれた相手が18歳未満
(b) 違法行為者が、HIV陽性者(a person living with HIV)
(c) 違法行為者が、その違法行為がおこなわれた相手の親や保護者
(d) 違法行為者が、その行為がおこなわれた相手に対して権威者
(e) 違法行為の被害者が障がいを持っている者
(f) 違法行為者がそれを繰り返しおこなっているもの:あるいは
(g) 男性や女性が、同性と違法な肉体的関係を持つことを可能にするために、その相手を支配する意図を持って、なんらかの薬物や材料、ものを使い、判断力を失わせた場合、それを提供した違法行為者

(2) この加重同性愛罪をおかした者は、死刑の判決の対象となる

(3) この罪に問われたものは、HIVの感染の有無を確認するために医療の検査を受けさせられる


4.同性愛未遂

(1) 同性愛罪の未遂者は重罪として、7年の禁固刑の対象となる
(2) 加重同性愛罪の未遂者は、終身刑の対象となる


5. 同性愛の被害者の保護、支援、補償

(1) 同性愛の被害者は、同性愛に巻き込まれたからといって、罰せられるべきではない

(2) 同性愛の被害者は、その犯罪の進行の段階に応じて、自身の見解や懸念が表明され、考慮されるよう支援を受けられる

(3) この法律の2、3にある同性愛罪、加重同性愛罪によって有罪が決定した場合、裁判所は、違法行為者に対して、量刑に加えて、その違法行為によって被害者にもたらされたどのような身体的、性的、心理的害に対しても補償することを命じることができる

(4) 補償額は裁判所によって決定される。裁判所はその違法行為の被害者が受けた被害に程度や、違法行為者の使用した強制力の度合い、被害者に生じた医療費等の支出などを考慮する。


6.プライバシーの保護(confidentiality)

(翻訳者により略…被害者のプライバシー保護が守られなければならないという条項)


7.同性愛の幇助

他のものが同性愛行為をおこなうさいに、手助けしたもの、教唆したもの、相談に応じたもの、斡旋したものは、7年の禁固刑の対象となる


8.同性愛の共謀

他の者と共謀し、虚偽の提示によって、あるいは他の騙しの手段で違法な肉欲的な知識を持たせるなどして、同性の者を誘導する共謀をしたものは、7年の禁固刑の対象となる。


9.脅迫などによる同性愛の斡旋

(略)

12.同性婚

同性と結婚しようとする者は、同性愛罪を犯すことになり、終身刑の対象となる。


13. 同性愛の促進

(1) 以下の者

(a) 同性愛を促進する目的のボルノグラフィー的なものを制作、斡旋、販売、放送、宣伝、印刷することに参加する
(b) 同性愛や他の関連した活動に資金提供したり、支援する
(c) 同性愛を目的として、あるいは促進のための家屋を提供したり、他の関連する不動産などを提供する
(d) インターネットや動画、携帯電話を同性愛や同性愛の推進の目的のために使用する
(e) 共犯者として、同性愛やそれと関連する活動を、教唆(きょうさ)する、促進しようとする

これらは違法行為となり、5000通貨の罰金または、5年から7年の禁固刑、あるいは、罰金と禁固刑の対象となる。

(2) これらの違法行為者が、会社組織や協会、NGOなどであった場合、認可は取り消され、責任者は7年の禁固刑の対象となる


14. 違法行為の通報の不履行

当局者で、この法律に違反していることに気づきながらも、最初に知ってから24時間以内に関連の当局に通報しなかった者は、違法となり、250通貨以下の罰金か3年以下の禁固刑の対象となる。


15. 裁判

加重同性愛罪は高等裁判所で審議され、この法律に反するその他の違法行為は、下位裁判所で審議される。


16. 領域外の裁判

以下の場合において、この法律はウガンダ国外にも適用される

(a) ウガンダ国民あるいは永住者が、その期間中に、ウガンダ国外でこの法律に反する行為をした場合、ウガンダ内でおこなわれた行為が、違法行為の一部となっている場合
(b) 違法行為の一部が国外において、一部がウガンダ内でおこなわれた場合


17. 引き渡し

この法律に違反した者は、既存の犯罪人引き渡し法に基づき、引き渡される


18. 整合しない国際的条約、議定書、宣言、因習の無効

(1) この法律に記されている精神や規定に反する規定を持つ国際的法は、無効であり、その非整合性の範囲は及ばない。

(2) 同性愛や性同一性障害やその他関連する事柄を合法化しようとするために使われる、「性的指向」「性的権利」「性的少数者」「性自認」の定義は、ウガンダでは使用されない。

19. 法規
この法律の規定の的確な運用のため、大臣は、制定法上の手段に乗っ取り、法規を定めることができる。

by Hideki_Sunagawa | 2011-05-11 02:10 | LGBT/gender


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